急に止まるイビキは危険?
睡眠時無呼吸症候群(SAS)
SASの症状
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、睡眠中に無呼吸状態(10秒以上呼吸が止まること)と、大きないびきを繰り返す病気のことです。
睡眠中の無呼吸やいびきによって良質な睡眠が妨げられ、日中の倦怠感や眠気を引き起こすため集中力や注意力が散漫となり、自動車の運転中や仕事中に重大な事故を引き起こす危険性もあります。
また、睡眠中に体内の酸素量が不足しがちになることで、全身のさまざまな部位に負担がかかり、心筋梗塞や脳卒中など命に関わる合併症にもつながることもわかっています。
原因
閉塞性睡眠時無呼吸は、睡眠中に空気の通り道である上気道が狭くなったり、一時的に閉塞することによって発症します。主な原因は、肥満による首や喉周りの脂肪です。
そのほかにも、生まれつき舌や扁桃、アデノイドが大きかったり顎自体が小さかったりすることで、横になった際に舌根沈下(舌の根元が喉に垂れ下がって上気道を狭くする)が生じやすくなることも大きな原因となります。
慢性的な鼻炎や副鼻腔炎・鼻中隔彎曲症など鼻の病気によって空気の通り道が狭くなることも原因のひとつです。
高血圧や糖尿病とのつながり
成人のSASでは、高血圧や脳卒中、心筋梗塞が起こる危険性が通常の3~4倍まで上昇することがわかっています。
これは本来、寝ている間は副交感神経が優位な状態になりますが、無呼吸・呼吸再開のパターンを繰り返すSASでは、交感神経が昂り血圧の上昇が引き起こされるためです。
また、SASを合併していると糖尿病の発症リスクが1.5倍以上になることも報告されています。睡眠の質が低下することでストレスホルモンが過剰に分泌され、血糖値や血圧が上昇し、脂肪が増加しやすくなります。脂肪量が増えることでインスリンが体内で効きにくくなり、糖尿病を発症しやすくなるのがこの理由です。
睡眠ポリグラフィー装置
睡眠の質や睡眠中の呼吸の状態を調べる装置のことです。
自宅で実施可能な簡易的な検査と入院が必要な精密検査の2つがあります。
一般的には簡易検査を実施し、SASの疑いが強い場合に精密検査がおこなわれます。
簡易検査は、携帯用の医療機器を用いて、いびきの状態や空気の流れを感知するセンサーを鼻の下に、血液中の酸素濃度を測る機器を指の爪に装着した状態で眠り、睡眠中の呼吸状態や上気道の狭窄の有無を評価する検査です。
精密検査は医療機関に入院したうえで、脳波・眼球運動・心電図・筋電図・呼吸曲線・いびき・動脈血酸素飽和度などの生体活動を、一晩にわたって測定します。
治療方法
睡眠時無呼吸症候群と診断された場合は、重症度によって次のような治療がおこなわれます。
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経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)
睡眠中に鼻に装着したマスクから強制的に空気を送り込み、狭くなった気道を広げる治療法です。装置から常に空気を送り、圧力をかけて気道が塞がらないようにして無呼吸を取り除く治療法です。
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マウスピース装着
顎が小さい、舌が大きいなどの原因でSASを発症している場合は、下顎を前方へ移動させる形状のマウスピースを装着し、空気の通り道を開くようにします。
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手術
アデノイドや扁桃肥大、鼻中隔彎曲症などの器質的な異常が原因となっている場合は、耳鼻咽喉科で手術を行い、その原因を取り除く方法です。
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生活指導
肥満が原因のSASの場合、減量を目的とした食生活の改善や運動習慣の定着などの生活指導を行います。
生活習慣病をくわしく知りたい方へ
肝臓疾患をはじめとする生活習慣病全般に関する解説は下記をご覧ください。